第3章 数学の世界B:数学の方法

私たちがものごとを認識し、課題を解決し、意見の妥当性を判断するといった知的活動は、広い意味で「考える」(think)ことだと言えよう。そして考えるときに私たちは「言葉」を用いる。「言葉」は他の人とのコミュニケーションに用いられると共に、自らの中で「考える」ときにも用いられる。このとき用いられる言葉は、普通は通常の意味での「言語」、すなわち個人の「母国語」(mother tongue)であるが、実はそれだけではない。第1章で述べたように、数学は「普遍的な言葉」として、独自の「考える」方法(および他とコミュニケーションする方法)を持っている。

ただしそれは自然言語と全く別物なのではなく、異なる言語同士と同様に、相互に翻訳が可能である(「翻訳」は、100%同じ意味の言い換えなのではない、という意味も込めて)。同時に「数学言語」は自然言語と区別される、幾つかの大切な特徴を持っている。

したがって数学の方法を一言で言えば、「数学の言葉を用いて考える」ことである。そこでまず、数学の言葉(mathematical language)がどのようなものであり、それを用いて記述される数学理論(mathematical theory)の枠組み(framework)がどのようなものであるかを述べ、ついでそうした「数学語」を用いて考えることがどのような行為であり、どのような性格を持っているかを、数学を用いて問題を解決するプロセスに即した形で述べよう。それが数学の方法(method)であり、それを実行できることが数学の能力(competency)である。